私たちに教えてくれることは…<作品紹介⑲>

1週間ほど前は、お昼ごろになると比較的ぽかぽかとした陽射しがさして暖かく感じることもありましたが、なかなか気温が上がらないようになってきました。庭園でも日向を探して歩くものの、つい「寒いなぁ…」と呟いてしまうほど。そんななか、膨らんできた椿の蕾や咲きはじめた花を見つけると、なんだか嬉しい気分になります。

そして昨年は12月の末頃からほころび始める梅の花が見られたので、今年はいつごろから見られるかな?と思わず探してしまいますが、いまのところはまだ開く様子はありません。ちょっと気が早かったようです…


では、今回も作品紹介をおこないたいと思います。今回取り上げるのは、「春夜宴桃李園序」(個人蔵)です。

作品名にもなっている「春夜宴桃李園序(しゅんやとうりえんにえんするのじょ)」は、『古文真宝』という前集・後集からなる中国の詩文集の、後集に所収されている李白の詩です。本作品には、そのあとに『古今集』に所収されている歌が4首書されています。作品の中に昭乗の署名はみられませんが、巻末に付された奥書にて、細合半斎が松花堂の真跡であり晩年の書であると判じています。


たっぷりと墨を含んだ筆で、ゆったりと書された文字はまさに麗しく、その柔らかさは見ていて本当に飽きません。そうやって文字を目で追っていると、目に飛び込んでくるのは様々な模様の施された料紙です。


本作品の料紙装飾については、先日の特別講演会のなかで先生も触れられていたので興味を持たれた方も多いのではないでしょうか?竹や椿などの様々な模様は、何種類かの金色で描かれており、非常に手が込んでいます。さらに、展示室ではご確認いただけませんが、本作の裏面には蝶の模様がおしてあるのです。なんとも流麗な、美しい料紙となっています。

この料紙は、俵屋宗達が下絵を手がけ、本阿弥光悦が筆をとった作品などの料紙と類似していることが指摘されています。おそらくこれらの料紙装飾は、当時の京都のハイレベルな文化のなかで流行していたものだったと考えられています。

優美でお洒落な料紙と、それに負けない麗しさをもった昭乗の文字。そのコラボレーションは、きっと当時の人の心を捉え、感嘆の言葉が飛び交ったのではないでしょうか。それは400年ほど経った現代においてもかわりません。

時を超えて多くの人を惹き付ける昭乗の書とそれを彩る料紙は、昭乗の能書ぶりと、料紙装飾をつくりだした技術と、そしてそれらを生み出した当時の文化がいかにハイレベルであったのかを教えてくれます。ぜひ、展示室でその美しさを体験してみてくださいね。


庭園散策へ行かれた際には、ぜひ茶室「梅隠」で開催されているガラス作品展「侘びのガラス」もご覧ください!会場となっている茶室のそばでは、白い椿が咲いています。そちらもお見逃しなく!

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特別展「松花堂昭乗、書画のたのしみ-麗しき筆あと、愛らしき布袋-」HP→http://www.yawata-bunka.jp/syokado/event/#ev366

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松花堂昭乗、書画のたのしみ  -麗しき筆あと、愛らしき布袋-

市制施行40周年記念・開館15周年特別展の特設ブログです。 展覧会情報や展示作品紹介など、様々な情報を発信していきます。

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