さぁいよいよ、特別展開催中の最後の週末となりました。いつもよりも更新時間が早いですが、今日は11時からギャラリートークを開催しますので、朝から更新させていただきますね。
今回ご紹介するのは「宗祇像」(個人蔵)です。前回・前々回のブログで愛らしい布袋さんを取り上げたのですが、今回は少し違った人物画をご紹介したいと思います。
ここに描かれているのは、室町時代に活躍した連歌師である宗祇(1421~1502)です。昭乗が描いた宗祇といえば、当館所蔵の伝松花堂昭乗「先賢図押絵貼屏風」を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょうか?同じ人物を対象としていながらも、2つの作品では宗祇を描く視点が異なります。当館所蔵の作品では宗祇の後ろ姿を描きますが、本作品では正面よりやや斜め方向からの姿を描きます。
本作品においては、宗祇は脇息に左腕を置き、片膝を立てて、右手にうちわを持っています。この姿、どこかで見たことがある…と思いませんか?実は、歌聖として知られる柿本人麻呂がよくこの姿で描かれるのです。もちろん、この「宗祇像」は柿本人麻呂の姿に倣っています。
昭乗によって上部に書かれた賛は、宗祇の和歌と発句です。しっかりと描きこまれているタイプの絵ではないにも関わらず肉感や衣の自然な様子が感じられる宗祇の姿と、能書家と知られる昭乗によって端正に書かれた賛とが、絶妙のバランスを醸し出している作品となっています。
昭乗が宗祇像に込めた、先人への憧憬も感じられるこの作品。そしてそこには、宗祇への想いだけではなく、歌を詠むことへの想い、歌聖・柿本人麻呂への想いなども込められているのではないでしょうか。
そこで今回は、「歌」繋がりでもう一作品ご紹介したいと思います。それは、「三十六歌仙色紙帖」(泉屋博古館蔵)です。
昭乗が書した「歌」といえば、当館所蔵の「百人一首色紙帖」をはじめいろいろな作品が現存していますが、本作品は「三十六人撰」に基づく代表的歌人たちの歌と、彼らの姿を描いたものです。書も絵も得意とした昭乗がどちらも手がけました。
さらっと描かれたような人物の描写と、美しい料紙に書された柔らかい文字。どの場面をひらいても、書も絵も楽しむことができます。そして料紙装飾も文字の並びも、人に見られることを意識して手がけられていることがわかります。自ら手を動かしながらも、見る人のことをしっかりと考えて作られていたのですね。そんなところからも、昭乗の人柄が伝わってくるようです。
さらっと見るだけでももちろん楽しめる作品ばかりですが、ちょっと立ち止まって見てみると、そこに込められた昭乗の想いや、自然と伝わってくる昭乗の人柄とが感じられます。今日のギャラリートーク、そして明日までの展示で、ぜひ体感してみてくださいね。
*****
特別展「松花堂昭乗、書画のたのしみ-麗しき筆あと、愛らしき布袋-」HP→http://www.yawata-bunka.jp/syokado/event/#ev366
展覧会の感想や、美術館1階の布袋さんとの撮影コーナーでの写真など、ぜひ「#松花堂昭乗展」のハッシュタグをつけてSNSでシェアしてください!お待ちしております。
0コメント