さて本日は、いよいよ特別展「松花堂昭乗、書画のたのしみ-麗しき筆あと、愛らしき布袋-」の最終日です。作品紹介も最後ということで、今回も朝一番に更新させていただきます。
ここ数日のブログで人物画を取り上げていましたので、最終回は「麗しき筆あと」のご紹介をしたいと思います。取り上げるのは、「大峯山蔵王堂勧進帳」(金峯山寺)です。
勧進帳は、以前の作品紹介で「平等院勧進帳」を取り上げましたが、こちらは奈良県・金峯山寺の山上本堂(現・大峯山寺本堂)である蔵王堂を再興する際の勧進帳です。平等院のものと同じく、昭乗は勧進帳の清書をおこなっています。
さらにこの「大峰山蔵王堂勧進帳」も、非常に美しい料紙に書かれています。桜の景色が金泥で描かれているのは、金峯山寺のある吉野をイメージしたものでしょうか。勧進帳とは本来、寺院などの造立や修理に際しての寄付を人々につのるためのものですが、昭乗の麗しい書と、その背景にひろがる美しい料紙は、それだけでも多くの人の心を動かしたと想像できます。
そして昭乗の書の不思議なところは、料紙装飾との組み合わせも相まって、見ているだけでも心地が良いというところです。それこそが「麗しい」という言葉のふさわしい筆あとといえるのではないでしょうか。「書は難しくてよくわからない…」という方も、楽しんでいただけると思います。ぜひ昭乗の書がつくりだす世界観をご堪能くださいね。
今回も2本立て!ということで、最後にご紹介するのは、「謝松花翁恵雅硯」(個人蔵)です。この短冊を書したのは、京都・一乗寺にある詩仙堂を建てて隠棲したことでもしられる石川丈山(1583~1672)です。
「最後に取り上げるのに、昭乗の作品ではないの…?」となりそうですね。ですがもちろん、松花堂に深く関わる作品なのです。
こちらは「謝松花翁恵雅硯(しょうかおうにがけんをめぐまるるをしゃす)」と読みます。”松花翁”とは、松花堂昭乗のこと。この短冊には、石川丈山が昭乗から贈られた硯に喜び、その硯のことを称える内容が書されています。
もともと武士として戦で武功をたてた丈山は、のちに出家して儒学を学んだことでも知られる漢詩人です。昭乗とは全くルーツの違う人物ですが、この短冊からも垣間見られるように、二人の間には非常に文雅な交流があったようです。昭乗が没した折には、丈山は追悼歌を詠んだりもしています。昭乗の広い交友関係には驚かされるばかりですが、その交友関係の背景には、昭乗がマルチな才能をもっていたことだけでなく、おそらくその人柄が多くの人に愛されていたことも理由としてあるのかなと想像できます。
今回の展覧会では、松花堂昭乗による作品だけではなく、在世時に昭乗と交流をもっていた小堀遠州や石川丈山などの人物、また後の時代に昭乗を慕った細合半斎や富岡鉄斎などの作品もご覧頂いています。これらの作品から、昭乗のハイレベルな書や絵の技術だけでなく、たくさんの人と交流をもち、時代を越えて愛される昭乗の姿を想像していただけたらと思います。
今日はお天気もよさそうです。「松花堂昭乗、書画のたのしみ-麗しき筆あと、愛らしき布袋-」の最終日、ぜひご来館ください!お待ちしております。
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特別展「松花堂昭乗、書画のたのしみ-麗しき筆あと、愛らしき布袋-」HP→http://www.yawata-bunka.jp/syokado/event/#ev366
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